魔神と海賊王 南洋一郎

魔神と海賊王

南洋一郎の児童版ルパン全集は、前作の「魔女とルパン」で昭和36年にいったん完結したあと、10年ごの昭和46年にこの「魔神と海賊王」から再開された。表紙のイラストを書いてるのがここから別な人に変わってる。原作は「ジェリコ公爵」で、ルパンが登場しないのにルパンシリーズに何故か入ってる作品。記憶喪失の主人公の正体は分かりやすいし、ミステリーというよりはどちらかというと恋愛小説。

恋愛要素はほとんどカットされることが多い児童版なのに、原作が恋愛小説で、しかも今回はかなりオリジナルに忠実な翻案なので、どうしても中途半端な感じがしてならなかった。盛り上がりもほとんどなし。そのせいか読むのもずいぶん時間がかかった。なにしろ面白くないので。これだと子供が読んでも辛いような気がする。
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魔女とルパン 南洋一郎

魔女とルパン

小学2年生頃に初めて読んだアルセーヌ・ルパンの小説。父親に連れられて行ったデパートの書店にこのポプラ社版がずらりと並んでいて、表紙で選んで買ってもらったのがこの本だった。選んだ基準は表紙のキャラクターが一番若くてカッコよかったからだったと思う。「これはルパンの最初の冒険である。・・・」というはじまりだけど、もちろんこのときはルパンというのが何者かなんて分からなかった。

小学2年生の読書力でも、かなり夢中になって最後まで読んだのをしっかりと覚えている。とくにクライマックスのどんでん返しの連続みたいな展開は本当に面白かった。本なんてせいぜい伝記物とか数冊くらいしか読んでないところへ、いきなりこんなの体験したら当然といえば当然なんだけど。それから10年以上たって偕成社版の原作を読んだときは、やたらと男女の愛憎劇みたいなエピソーソドが出てきて、とても違和感があった。ポプラ社の方ではそういうところはほとんどカットされてたし、ポプラ社版が子供向けにいろんな改訂をしてるなんて知らなかったから。

今回なんと40年以上ぶりにこの「魔女とルパン」を読み直したわけだけど、あらためて宝探し冒険小説として良くできていると感心した。大人が読んでも下手な映画を見るよりも全然楽しめるし、是非とも子供たちにも読んでほしいところなんだけど・・・。

そしてこの「魔女とルパン」でポプラ社版はいったん完結・・・だったことは最近まで知らなかった。ポプラ社版のルパンシリーズは、厳密には原作の出版順とは違うけれど、大まかには原作と近くなっている。原作の方はこの作品あたりからだんだん面白くなくなるので、出版社もここらへんで終わらせるのが妥当だと考えての出版だったのかな。

消えた宝冠 南洋一郎

消えた宝冠

舞台用に書かれたシナリオとそれをもとに書かれた小説が原作。原題はシンプルに「アルセーヌ・ルパン」で、日本では「ルパンの冒険」というタイトルが一般的。ルパンの年齢が28歳とはっきり本文に出てくるせいか、表紙のルパンは他のポプラ社版に比べてやや若め。舞台劇がベースなのでどちらかというと地味な内容だけど、あまり荒唐無稽な話よりはこれくらいの方がちょうどいいような気がする。予告した時間にルパンが現れないと思ったらすでに盗んだあとだったりとか、警部をバカにするラストのくだりなんかは、原作が発表された時代には、こういうブラックユーモアは当時の聴衆に大うけしたんじゃないかな。こういうとろが堅物のホームズとは違うアルセーヌ・ルパンの魅力なんだろうし、だからこそ子供の頃に読んでハマった人が大勢いるんだと思う。

内容は概ね原作にそっていて、ルパンが弱音を吐いたりするところなんかは、変更してるかと思ったらほとんどそのままだった。敵役の名前もガニマールにしないでゲルシャールのまま。ヒロインのソニアが泥棒するくだりや、ルパンとの恋愛エピソードはばっさりカット。原作を先に読んでるとこっちの児童版は、心理描写なんかが省略されっすぎてて、どうしても薄く感じてしまうのは致し方ないところ。

ピラミッドの秘密 南洋一郎

ピラミッドの秘密

モーリス・ル・ブラン原作ではなくてほとんど南洋一郎のオリジナル。内容はミステリーというよりほとんど冒険小説。ルパン作品の中も冒険小説みたいな作品はあるけど、それにしてもピラミッドとか表紙のイラストとか他と比べて違和感ありすぎ。舞台がナイル川だったりジャングルだったり。なんでこんなのを全集に入れたのかまったく謎。作者が自分のリジナルも入れてみたくなったからなのか、締切に間に合わなくて書きかけの原稿をリライトしたからなのか。もはや知る由もないし。

南洋一郎という名前は、子供向けルパンの訳者としてしか知らない人がほとんどだと思う。でも実際には秘境物を得意として、すごい数の子供向けSF冒険小説を書いてし、何度も重版を重ねるようなベストセラーも多数ある大作家だった。ところがポプラ社版のリライト以外の作品はほとんど見かけたことがない。なんで再版されないのかは今回「ピラミッドの秘密」も初めて読んでみて納得した。土人だの奇形だの今の時代にはそぐわない設定が多々出てくるので、再版したくても出版社の都合で出来なかったんだろう。それに昭和30年代頃の子供にはワクワクするような内容であっても、携帯、スマホ、ゲームに慣れた今の子供が読んでもピンと来ないだろうし。ちょっと寂しい気もするけど。

虎の牙 南洋一郎

虎の牙

原作は上下2巻に分かれて出版されることが多いシリーズ屈指の長編で、それを他のポプラ社版と変わらない250ページ程度にまで圧縮。ほぼほぼ原作通りで枝葉は思いっきりカット、ダイジェストみたいに展開がポンポン進むのは「813」のときともそうだったけど、子供向けの場合それがいい感じ。土人って表現が頻繁に出てくるあたりに時代が感じられる。

遺産相続に関わる人間が次々と殺されていくという展開は、横溝正史がそのまま金田一耕助シリーズで借用。「虎の牙」はもともと映画の原作として書かれたので冒険小説の色が強いけど、金田作品の原点であると考えたら、ミステリーとしてもなかなか画期的な作品なのかもしれない。

恋愛部分をほとんど省略するのが南版ルパンの特徴で、この「虎の牙」もそうなんだけど、最後になってルパンとルバッスールが恋愛して一緒に暮らすような描写がいきなりでてくる。原作にあったような途中過程がまったくないのでどう考えても唐突だし、子供向けのバージョンでなんだからなくてもよかったんじゃないかな。よく読むと南版のルパンにはそんな突っ込みたくなるようなミスが多々あるんだけど、そんな重箱の隅をつつくようなことは野暮なのかもしれない。

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