007ムーンレイカー

原題:Moonraker
オリジナル出版:1955年イギリス
邦訳:1964年3月13日「ムーンレイカー」井上一夫訳、東京創元社
【ストーリー】
イギリスの億万長者ヒューゴ・ドラックスが私費を投じて開発した原爆搭載ロケット「ムーンレイカー」を国家に寄贈することになった。そんな慈善家がカードクラブをしているとの噂を確かめるため、諜報部のMはジェイムズ・ボンドと共にクラブへ向かう。ドラックスは確かにイカサマで荒稼ぎをしていたので、ボンドはイカサマ勝負を仕掛けてドラックスから大金を巻き上げる。
その翌日、ドーバーの断崖にあるムーンレイカー基地の保安主任が死亡する事件が発生。翌週にはムーンレイカーを、核弾頭なしの状態でテスト発射することになっていたため、ジェイムズ・ボンドが後任者として派遣される。彼は先に潜入していた特別部の婦人警察官ガーラと共に大陸横断ミサイルの警備にあたる。
ドラックスに疑いを抱くガーラによってドラックスの正体が露呈。彼は元ナチス親衛隊の生き残りで、第二次世界大戦の復讐のためソ連と手を結び、テストに見せかけて本物の核弾頭をムーンレイカーに装備し、ロンドンに打ち込む計画を企んでいた。ドラックスに正体がバレたガーラを救おうとして、ボンドも罠にはまってしまう。囚われの身のボンドとガーラの目の前で、ムーンレイカーの発射は迫るのだった・・・。
【解説】
ムーンレイカー (moonrakers) とは、隠語で馬鹿者・阿呆者を表すイギリスの古典的隠語。 ムーン (moon) は「月」、レイク (rake) は「熊手」、直訳すると「ムーンレイカー」とは「熊手を使って月を集める人」となる。億万長者が国家に寄贈した原爆ロケット「ムーンレイカー」の本当の狙いは、ロンドンに落として大惨事を引き起こすことだという皮肉の意味も考えられるタイトル。
007シリーズとしてはめずらしく、全編イギリスで物語が展開。冒頭でローリア・ポンソンビーという美人で独身の秘書がちょっとだけ登場。ボンドが普段勤務しているロンドンの事務所は、窓からリージェント公園の緑が見える場所にあり、00のナンバーを持つエリートたちは、そこに勤務する女性の憧れでありながら、その特殊な仕事ゆえに決して結婚の対象とはなりえない。そんな密情報部の普段の生活が描かれていたりする。キングスロードに住み心地のいいアパートを持っていて、メイというスコットランド人の家政婦を雇っていて、給料は上級国家公務員並み。小説のネタになるような事件は年に2~3件しか発生しない。余談ながら情報部で〝00〟の番号を持っているのはボンドと008、0011の三人だけ。

リージェント公園
1954年11月26日という日付が出てくるので、時代設定は作者が作品を執筆中の時期というのがはっきりする。ただしカジノ・ロワイヤルのときからボンドの年齢はなんとなくあやふやで、このとき30代半ばみたいなことになっていたり。。。
ムーンレイカーの発射基地があるのはドーヴァー海峡。白亜の岸壁で有名なところ。ロンドンからだと急行電車で2時間くらい。実際に行ってみたけど、海岸にいく道がよく分からなかった。

ドーヴァーの白亜の岸壁
ここから大陸横断ミサイルを発射したということは、こんなようなイメージかな。

ドラックスとのカーチェイスでボンドは愛車のベントレーを大破。新しく1953年マークⅥ型オープンの大型車を手に入れている。色は前のと同じグレイ。
【コメント】
3作目にして作品のスケールは大幅にアップ。下手したらロンドンにミサイルが落っこちて何十万人もの死者が出るところを、ジェイムズ・ボンドの活躍で・・・映画の方はスケールが大きくなりすぎて、現実離するたびに原点回帰を繰り返してたけど、そもそも原作がそうだったという次第。
ボンドのキャラクターがどんどん正義の味方になりだして、今回の事件では自分が犠牲になってでも大惨事を防ごうとしたりする。なんだか、テレビドラマ「24」の原点みたいな感じ。作品が書かれた1954年頃は、戦争で負けたドイツ人がまだまだ健在で、第三次世界大戦がいつ起きても不思議じゃなかった時代。なので悪役のドラックスみたいなことを本気で考えるやからは実際にいたのかもしれない。実行出来る出来ないは別にして。
核爆弾の驚異からロンドンを救ったボンドは、国家的英雄としての評価に値する活躍をしながら、国家公務員としての仕事をしただけという評価にとどまり、しかも最後はあっけなくふられてしまうというさびしい終わり方がなんとも印象的。
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- 本・雑誌
- 推理小説・ミステリー
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まとめ【007ムーンレイカー】
原題:Moonrakerオリジナル出版:1955年イギリス邦訳:1964年3月13日「ムーンレイカー」井上一夫訳、東京
- まっとめBLOG速報
- 2012.11.22 16:09